口臭治療
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口臭についての悩みは以前からの問題でした。しかしながら、「官能検査」は可能であったものの、「ガスクロマトフィー」などを使用した検査は一般の歯科医院では器材の調達や簡便性、そしてコストなどから不可能なのが実情でした。時代は下り、最近では歯科医院でも購入可能な「口臭測定器」も販売され、客観的データをもとに口臭に対して対応することが可能となってきました。

■ 口臭症の分類

1.真性口臭症(社会的容認限度を超えた口臭があるもの)

(1) 生理的口臭
 原因疾患のないもので、その原因の多くは舌苔と言われている。

(2) 病的口臭
 a. 口腔内の原因由来
 b. 耳鼻科、呼吸器科などをはじめとした全身由来のもの

2.仮性口臭症(口臭を訴えるが社会的容認限度を超えた口臭が無いもの)
 検査結果をもとにカウンセリングを行う。

3.口臭恐怖症(真性口臭症・仮性口臭症に対する対応では解決できないもの)
 この区分の患者に対する対応は非常に難しい。

■ 口臭の原因

(1) 歯周病: 細菌の繁殖に伴う組織分解により口臭起因物質が発生する。

(2) 唾液: 1日の唾液発生量は約1.5Lと言われていますが、唾液の分泌が少なくなると「口腔内の殺菌・自浄作用」が低下し口臭の原因となる。

(3) 口内炎やその他の口腔内軟組織の異常が口臭の原因となる場合がある。舌苔などが典型で舌苔中の脱落上皮細胞や白血球を分解しVSCを産生する。

(4) 全身的要素: 

# 排卵日前後を含む2日間および月経時には硫化水素の産生が多いらしい。なぜなら、女性ホルモンが歯肉細胞のライソゾームをきじゃく化させ、酸性加水分解酵素が逸脱し炎症性変化がおこるためとのこと。

■ 口臭の原因物質

 口臭の主な原因物質は、揮発性の硫黄化合物(VSC=Volatile Sulfur Compounds)と言われている。
口腔内のVSCとしては、「硫化水素」「メチルメルカブタン」「ジメチルサルファイド」の3つが代表的である。

これらの物質は、口腔内が中性からアルカリ性の域で多く生産され、酸性化では生産されにくいと言われているが、口腔内が酸性に傾くと虫歯という別の問題が生じてくるのは言うまでもない。

(1) 生理的口臭の発生: 舌背後方部における細菌の腐敗作用が原因と言われている。そのため、起床時には一番口臭が強く、ハミガキや食事・により口臭は減少すると言われている。また、舌の安静時に舌の背面と口蓋とが密着している人に舌苔の付着が多く、その結果として口臭の発生が生じやすいとも言われている。

(2) 病的口臭の発生: 生理的口臭の発生と同様な原因が考えられる。歯周炎によるポケットから生ずるとも考えられるが、それは少ないと言われている。なお、歯周病による口臭は「メチルメルカブタン」が「硫化水素」より多いと言われている。

■ 口臭の確認

口臭測定器の利用: 最近歯科医院でも使用可能な口臭測定器も発売されている。色々な種類のものがあるが、当院では「ブレストロン」を使用している。

官能検査: 簡単に言うと「鼻でかぐ」という方法である。測定器での検査データと官能検査の結果が一致しないことも多く、感覚的な問題は非常に難しいといわざるを得ない。

■ 口臭に対する対応

(1) 歯周病の治療: VSCは口腔粘膜透過性を亢進させるため、炎症を発生させる物質(プロスタグランジン)が浸透しやすくなり、歯周炎となり易い。つまり歯周炎はVSCの生産の原因になるが、VSCは歯周炎の憎悪の原因にもなる。つまり、歯周炎の治療は大事である。

  # 歯周病口臭の特徴
慢性的な歯周病では、歯周ポケットは口臭発生の中心ではない。
舌苔が口臭発生の中心(口臭の約60%を産生)
メチルメルカブタンが硫化水素より多い
口臭強度は歯周病重症度に比例
メチルメルカブタン/硫化水素比が歯周病重症度に比例

(2) 唾液: ストレスの除去、放射線治療による影響、口の中が乾燥しないように水を飲む(人工唾液)、アルコールを避ける(加水分解で口が渇きやすい)、舌の運動(発音)、口呼吸の防止

(3) 全身因子: もちろん全身的な病的因子を取り除くことが大事である。

(まとめ) 

(1) 口臭にも色々な側面があるが、病的口臭にかんしてはまず原因疾患の治療が第一である。

(2) 生理的口臭に対しては、口臭の主たる発生源となっている、「舌苔」の除去が大事である。舌苔の除去用具は専用のものも含め色々存在するが、あまり機械的な刺激が強すぎると味覚障害などが生ずる場合もあるので注意が必要である。なお、洗口液による口腔衛生の保持も有効と言われているが、配合成分によっては口腔乾燥などの副作用が生じる場合もあるので注意が必要である。

(舌清掃法)

目的: 口腔内清掃・口臭予防・健全な味覚の保持または回復

ただし: 舌尖の疼痛いきちは低いが、舌背の疼痛いきちは高い。通常のはぶらしは刺激が大きくて危険。刺激は発癌性を促進する、といったことに注意を払う必要がある。

■ その他の口臭に対するワンポイント

# 口臭に性差は認められない。
# 口臭に年令差は認められない。(これは生理的口臭につてのことで、歯周炎の有病率が高い中高年に病的口臭が多いというのは、また別の問題である)
# 口臭は食前が多い。(約20%は体調または社会的活動の情況によって1日のうち少なくとも一部の時間帯に口臭を生じると言われている)
# 4mmのポケットをもつものは、4mm未満の者より舌苔量は4倍多い。
# プラーク、未処置うしょく歯、ブラッシング習慣なども関係ない。
# 喫煙習慣とは関係ない。
# 統計によると、被検者の「61%が真性口臭症 39%が仮性口臭症及び口臭恐怖症」。真性口臭症のうち、生理的口臭21% 口腔由来の病的口臭37% 全身由来の病的口臭3%」

統計データなどは「クインテッセンス社 臨床家のための口臭治療のガイドライン」より引用

■ 口臭測定

# 口臭測定は、測定器を設置してある歯科医院などで測定してもらうほか、個人向けに売り出されている口臭測定器を利用するのが便利です。代表的なものとして、「タニタ」のブレスチェッカーHC-265(3000円程度/平成16年6月)などがあります。


# 050520: 最近の研究では、口臭の原因物質の一つである「硫化水素」には発ガン性があるということもあきらかになっていますので、対人関係だけでなく本人の健康上の視点からも、口臭はバカにはできません。ただし、発ガン性があるとはいってもすぐに癌を発生させるほど毒性は高くはありませんので神経質になる必要はありません。

# 060719: 口臭の原因として精神的な緊張状態があると言われています。なぜなら、精神が緊張すると舌が上顎の裏側にピッタリ付いて、舌の自浄作用が抑制されるからです。そうすると舌には舌苔が生えやすくてそれが口臭の原因になるからです。ちなみに舌苔とは舌の表面の細胞のカスと死滅した細菌の固まりのようなものです。
 従って、ストレスによって口臭が増えたと思った時は、舌の緊張をほぐして上顎から離れて唾液の流れを良くするということも解消法の一つです。

山形市