歯科医療と保険診療
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★ 歯科医療と保険診療

歯科医療と一般医科治療で大きく異なるのが「保険か?保険外?」か、という話題である。

例えば、盲腸で手術して入院した場合、通常の治療法で「保険外を利用するか?」と聞かれるケースはほとんどありません。しいて言えば、「病室を差額ベットの部屋にするか?」と言ったことくらいではないでしょうか。しかし、歯科医療においては常に「保険?保険外?」という話題がつきまとい、結果として「歯科医療は金がかかる。ぼったくりだ。」という感じ方でとらえられることがあり、また「保険では充分な治療ができない」という見方につながるのです。

実態はどうでしょう?歯科医療においても通常の治療は保険で行えます。例えば、「虫歯を詰めたり」「歯を抜いたり」「神経を取ったり」という治療は保険で行えますし、そういった治療で「保険か?保険外か?」という話題が出ることは希です。そして、「保険か?保険外か?」という話題がでるケースの多くは「かぶせ物」「ブリッジ」「入れ歯」といった、いわゆる「補綴物」と言われるケースがほとんどです。

こういった補綴物は、最低基準は保険給付されていますが、それで満足できるか否かというのが「保険か?保険外?」の大きな分かれ目となります。その典型的なものが「インプラント治療」です。これは歯を失って「取り外しの入れ歯」の必要が生じた時に、歯に代わる「人工歯根」を「顎の骨」に埋め込んで、「差し歯」のようにする治療法です。

このように、一般医科では医療の範疇で患者さんが選択する項目が少ないのに対して、歯科では「治療法」「使用材料」など選択可能な項目が多く、その中の多くは保険給付外であることが、このような「保険か?保険外?」かという話題が常につきまとう要因となっています。そして、口腔内の機能は複雑なのもその要因の一つになっています。例えば「耳」は平たく言えば、音を感じる器官以外の機能は有していません。それに対して、口腔内は「咬む」「温度を感じる」「味を感じる」「呼吸をする」など多くの機能を有しており、ある種感覚器の機能が前面に出る場合があります。従って、「総入れ歯」といえども「咬める」という機能を満足させるだけでは充分では無い場合も多いのです。そして、感覚的な適応力は患者さん一人一人に差があります。従って、同じような歯の欠損状態でも、同じような入れ歯を入れて、それで皆さん満足ということはいえず、もう一歩進んだ治療法が必要な場合があるのです。

それは、車を買うのと同じような面とも言えるでしょう。
大人5人が乗車できて普通に走る車は、1500cc程度の小型自動車で充分ですが、「それでは狭い」「乗り心地が悪い」「高級感が無い」「加速が悪い」などという不満をお持ちの方は、もう少し高い車中型・大型自動車を買う必要があります。この場合、小型自動車は保険で購入できますが、それ以外の車は自費(保険外)で買って下さいというのと同じです。
従って、歯の治療を行う場合には「保険が効くか効かないか」という考え方もさることながら「保険の治療で充分満足できるかできないか」という考え方で選択しなければなりません。
そのためには、私たち歯科医も患者さんに充分説明し、且つ患者さんも歯科医に納得できるまで質問することが重要なのです。
しかし、それは言うが安く行うが難しで、機能的な面は説明できても「感覚的」な面はなかなか説明しにくいのです。

山形市