抗生物質の使用は火事の消火のごとし
   

 抗生物質とは、歯ぐきが腫れたり、歯の神経が化膿したりした時に、感染した細菌の活動を抑えるために利用します。特に年配の方は「ペニシリン」と言えば、聞いたこともある方が多いでしょう。ペニシリンは1920年代にイギリスの細菌学者であるフレミングにより、青カビから偶然に発見された抗生物質の元祖のようなものです。

 さて、申し上げたように抗生物質は化膿している時などに服用するのですが、その効き目が出るまでに時間がかかる場合もあります。

 それはこうなのです。

 例えば、火事の火を消す場合には、その火事の規模にあわせた消防車の出動と放水量の決定、そして火元にあわせた消火材料を選択して、完全に火種がなくなるまで放水する必要があります。

 抗生物質投与の場合も検査によって原因菌の特定を行った後に、その菌に効力のある抗生物質を必要量投与します。しかし、実際歯科治療時に感染菌の特定をする検査を行う場合は少なくいわゆる広域スペクトルといって多くの菌に効力のある薬剤を投与します。しかし、まれに充分な効力が得られない場合があり、この場合には薬剤の種類を変える必要があります。

 また、火事の消火の際、一旦火が消えたと思っても残り火から再度出火することがあり、最後の一押しの放水が重要です。抗生物質の利用も同様で、3日分を飲んで症状が完全に消退しない場合には続けて服用することが重要です。たまに、3日分を服用してその後数日経過してから再度来院して薬を希望する方がおられますが、こういった服用法は耐性菌を作ったりしやすいので気をつける必要があります。

 それと同様に、1日飲んで症状が治まったからといって自己判断で服用を中止することも問題です。火種が残っているかもしれません。

 抗生物質の服用による消炎治療は、まさに「火事の消火活動」と同じなのです。

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