心の免疫力
   

 日本は自殺大国といわれ、その数は毎年3万人にもおよび、また、うつ病の患者数は2008年には100万人を超えたそうです。そして、この一因には「こころの免疫力の低下」があるといわれています。

 また、ここ10年間で2倍以上に増えた病気は「アレルギー疾患」と「こころの病気」で、これらの病気は50年前にはほとんど見られなかったそうです。そして、免疫学者の藤田紘一郎によると、これらの病気を克服するには、「こころの免疫力」を高めることが大切だと書いています。

 「月と六ペンス」の作者であるイギリスの小説家のサマセット・モームは、「毎日、自分の嫌いなことを二つずつ行うのは、魂のためによいことだ。」という言葉を残しています。

 あまりにも清潔な生活は「体の免疫力」を下げますが、あまりにも脳に心地よいストレスの無い生活はかえって「心の免疫力」を下げる結果にもなりかねないようです。適度なストレスに適応することは、「心の免疫力」を高めるのにつながるのかもしれません。「自分の嫌いなことを二つずつ行う」というのは、適度なストレスなのかもしれませんね。

 私の職業の歯科医もなかなかストレスを感じやすい仕事。仕事中のストレス度を「唾液アミラーゼモニター」で計測すると、結構高い値がでます。それに対して、休日や入浴・飲酒後には低い値がでます。これからわかることは、「適度の休み」「入浴」「飲酒」はストレス解消の役にたつということでしょうか?もっとも斎藤茂吉の長男の斎藤茂太は「脳のストレスはアルコールではらすべきではない。」と、その著書の中で述べています。これは、ストレス解消のためのアルコール依存症を念頭においての話のようです。

 一般の内科でもそうですか、歯科領域でもストレスと関連する症状を訴えるケースもみられます。その代表例は「顎関節症」や「知覚過敏症」でしょうか。こういった症状に心当たりのある方は、治療も大事ですが、「心の免疫力」を高めてストレスに対応することも重要かもしれません。

 なお、腸内細菌が減少すると、免疫力が低下するそうです。腸管には人の免疫細胞全体の70%にあたるリンパ球がみられ、現在の過剰?清潔社会が腸内細菌さえも安心し
て腸に棲めない環境ができあがっており、その結果としての免疫力の低下も見られるようです。

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