歯を食いしばる
   

口腔内の用語を使用した慣用句は結構多いもので、その中の一つが「歯を食いしばる」という表現です。

「歯を食いしばる」とは、そもそも「全力を出すために集中し耐えるという意味」ですが、「困難や悲しみ、怒りに耐えると」いう意味もあります。

意識して歯を食いしばることもありますが、問題は無意識で食いしばることなのです。

なぜなら意識して食いしばるよりも、無意識で食いしばる方の力が数倍も大きく歯や歯周組織に与える影響が非常に大きいからです。

よく、「火事場のバカ力」という表現をしますが、それと同じなのです。これは火事の現場などにおいては、「タンスを担いで逃げた」とか「子供三人抱きかかえて逃げた」とか言うように、普段発揮する何倍もの力を発揮することですが、たとえ一時そのような力を発揮しても、次の日にはどうなるでしょう。たぶん、筋肉痛なんかで体はガタガタですね。つまり、食いしばりによる大きな負担の後には同じような症状が、歯の痛みや歯周組織の不具合として生じることがあるのです。

まぁ、たとえて言えば、1トン積みのトラックに3トンの荷物を積んで走ったらどうなるでしょう?タイヤのパンク?タイヤの異常磨耗?サスペンションがダメになる?それとも車体が歪む?このように車には良くない影響がたくさん出ますね。それと同様に、歯ぎしりや食いしばりがあると、歯がしみるといった知覚過敏症が生じたり、歯が異常に減ったり、詰め物が取れたり、中には歯がまっぷたつに割れてきたという方もおられますし、顎関節症が憎悪する方もおられます。

このように、歯ぎしりや食いしばりは知らないうちに体に大きな悪影響を与えることがあります。では歯ぎしりの原因とは何でしょうか?一般には「精神的要因」「噛み合わせの異常」の他に「抗うつ薬の副作用」としても発症することもあると言われています。従って、これらの原因に対する対応をとらなければ「歯ぎしり」はなかなか治りませんが「精神的要因」となれば、もはや歯医者の守備範囲ではありませんからねぇ。

しかし、このような歯ぎしりや食いしばりから歯や歯周組織を保護することはできます。それは寝ている時に「ナイトガード」という義歯状のものを装着することです。これを装着することによって歯ぎしりを治すことはできませんが、歯ぎしりといった大きな負担から歯や歯周組織を守ることは可能なのです。

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