江戸時代の歯科治療
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★ 口中医桂助事件帖1 南天うさぎ
和田はつ子作 小学館文庫

# 第一話 南天うさぎ
・ 口中医の藤屋桂助は幕末(家定時代)の日本橋随一の呉服問屋の若旦那で歯科医。
・ 清熱解毒薬(せいねつげどくやく): 黄連(おうれん)や黄柏(おうぱく)、黄岑(おうごん)、山し子(さんしし)などを処方。
・ 歯科解剖図である全体理論。
・ 塗布麻酔に使う、鳥頭(うず)や細辛(さいしん)などを細かくしたものを歯茎に塗る。ただし、子供の抜歯で使用する場合には猛毒の鳥頭は除く。
・ 解毒鎮痛効果のある、升麻(しょうま)と竜胆(りゅうたん)の煎じ薬。
・ 白牛酪(はくぎゅうらく)。練乳とバターの中間。砂糖を加えた牛乳を煮詰めて型に詰め乾燥したもの。
・ 牛酪(ぎゅうらく)。今で言うバター。
・ 房楊枝: 今の歯ブラシ。黒文字の木がいいが女用には川柳(かわやなぎ)などの柔らかいものが良い。
・ 歯草(はくさ): 歯周病。
 
# 第二話 天井蓮
・ 当時のむし歯の治療は、開いた穴をガリガリ削って、黒くなった部分を削り取り、丁子(ちょうじ)や乳香(にゅうこう)など殺菌作用のある生薬を詰めて、痛みをとめる程度。
・ 歯砥(はとぎ)などの、口科道具、、、。
・ 当時の歯磨き粉は、房州砂に麝香(じゃこう)や樟脳(しょうのう)などが混ぜられて広く売られていた。房州砂は陶土を水に溶かして上澄みを沈殿させた、粒子の細かな磨き砂。
・ ハコベ塩: 塩にハコベの茎葉の汁を混ぜて焼いたもので歯草(歯周病)に良く効く。
・ くっつき歯: 癒合歯のことかな。
 
# 第三話 しろつめくさ
・ 甘露飲(かんろいん): 重症で出血や疼痛、口臭がひどい場合の特効薬で甘草の根に枇杷(びわ)の葉、黄岑(おうごん)などを調合する。

# 第四話 よわい桃
・ 桂助は大奥に初花の方のむし歯の治療に出向く。
 
# 第五話 まむし草
・ 初花の方のむし歯は神経を冒し、根におよんでおり、発熱もあった。
・ 軽い麻酔効果のある細辛(さいしん)を痛む歯の歯茎に塗り、痺れるのを待って、根にできている膿の袋を切り開いた。
・ その後、黄連(おうれん)などを使って解熱解毒の薬を処方。
・ 腫れが治まってもすぐには歯抜き(抜歯)はできない。まだ、歯や体に毒が残っているから。日にちをかけて膿んでいた歯を治療し、身体に力をつけてから歯抜きをする。
・ 歯抜き: わずかに鳥頭(とず)の入った麻酔薬を歯茎に塗って、右手の親指と人差し指でつまみ上げて抜いた。
※ P3の歯周病?
・ 抜いた痕が膿んだりしないように、升麻(しょうま)や竜胆(りゅうたん)などで治療。
・ 鬼歯: 生まれつきに生えてくる歯。
※ 鬼歯の子は、村に何か厄難があると、疫病神と言われて手にかけられることがあり、親も村八分にされないように、産婆に頼んで手にかけることもある。

あとがき
本著の執筆にあたっては、日本歯内療法学会副会長の市村賢二先生と池袋歯科大泉診療所院長・須田光昭両先生の長きに亘る不動の友愛を知って桂助、鋼次の人間像を創造させていただき、また日本歯科史の第一人者であ愛知学院大学名誉教授である榊原悠紀田郎先生によって江戸期の歯科治療の概観を学ばせていただきました。
(後略)

★ 口中医桂助事件帖2 手鞠花おゆう

# 第一話 手鞠花
・ 口中医の看板には「口中一切」「はいしゃ」などが多かった。
・ トリカブトの根を「鳥頭(うず)」と言い、鎮痛効果があり、粉末にした鳥頭を歯茎に塗布して歯抜きを行う。
・ おう、この時代から予約帖があるんだねぇ。
・ お歯黒: 酢酸第一鉄

# 第二話 朝顔奉公
・ 今で言う差し歯は、当時「接ぎ歯」と言われており、鯛などの魚の骨を加工して作っていた。

# 第三話 菊姫様奇譚
・ 乾した生姜と雄黄(ゆうおう)を粉にしたものを痛むむし歯の穴に詰めた。

# 第四話 はこべ髪結い
・ 黄連解毒湯(おうれんげどくとう): 黄連や黄柏(おうはく)、黄?(おうごん)、山し子(さんしし)を処方したもの。
・ 下の前歯が沁みる → しかし、むし歯は無い → 気分がイライラすることは無いかと尋ね、肩が凝っていることを確認して、葛根湯を処方。葛根湯は、悪寒、発熱、疼痛を伴う風邪に良く効く。そして、緊張して血流の悪くなった首と背中を緩和させ、発汗させて熱を下げる効能がある。葛根湯は、首や背中が張って陥る不眠にも効き目がある。むし歯や歯草などでは無く、歯が沁みる場合には、肩こりや不眠など、とかく心労がたたってのことが多かった。
・ 息美香(そくびこう): お酒に砂糖と薄荷(はっか)を混ぜた物で、口の清涼剤。

# 第五話 忍冬屋敷
・ 口の中の爛れや腫れ物には、黄連やしし、黄?(おうごん)などの入った、三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)、黄連解毒湯、加減涼隔散などがよく効いた。
・ 芥子菜(からしな)の種の芥子粉と生姜を混ぜて練ると歯痛に効く芥子泥になる。
・ 大根のおろし汁は口や舌、歯の痛みを和らげるし、黒焼きにした茄子のヘタを塩に混ぜて歯茎をこすると歯草の予防になった。
・ 忍冬(スイカズラ)は一年中葉が枯れず、これを干して煎じると解毒剤になる。
・ 附子湯(ぶしとう): 附子とはトリカブトのことで鎮痛・麻酔作用がある。

山形市